府中家具について
木材はそれぞれ個性がある。府中家具にはその良さを引き出す技がある。
府中家具は、広島県府中市の地場産業で300年の歴史を誇ります。
そして、その伝統技術はたんすなどの和の家具の枠にとどまらず、現代の家具にも応用され活かされています。
history
府中家具のこれまで
「ものづくり」集積都市府中
府中家具の府中市は広島県の内陸工業都市です。木工以外にも機械・金属・繊維・プラスチック製品などの製造業が集まります。ダイカスト製品などの機械部品、ラジコンヘリコプターなど日本一を誇る製品も数多くあります。
製造業を含む二次産業の就業者の比率は41.8%(広島県全体では27.2%)と高く、まさしく「ものづくり」の街と言えます。その中で特に木工関連の企業数は約170社(府中市内の全体の事業所数は2500程度 ※平成16年)にのぼり、製材から小売りまで幅広く集積しているのも特徴です。まさしく「家具の街」と言っても過言ではありません。
300年前からはじまった府中家具
家具の街 府中において家具作り(タンス作り)がはじまったのは今から290年ほど前で、宝永年間に備後有麿村の内山円三が大阪で箪笥(タンス)の製法を習得し、帰郷後制作に着手したのが始まりとされています。 明治期には、農閑期の副業としてタンスや長持ち含む各種木工製品が当地にて製造されていました。大正から昭和にかけて100以上のタンス職人が軒を連ね、朝から晩までノミやカンナの音が響いていたと言います。
府中で木工業が根付き発展した理由としては、旧街道(石見銀山からの石州街道)の要衝であったことによります。中国山地から伐採された木材が府中を経由して港のある福山などに運ばれていたことも府中家具の発展に寄与しました。
また、気候が木材の乾燥に適していて、ひずみや狂いの少ない良質の製品を作ることができたからとされています。 戦後、交通手段の発達により、より遠方に販路を広げていき、昭和30年代前後に「婚礼家具セット」を開発することでタンスなどの婚礼家具においてブランドの地位を築いたのでした。 現在においては、婚礼家具・タンスなどで培った技術をもとにリビング・ダイニング・キッチンの家具の開発・生産を展開して府中家具は生まれ変わりつつあります。
technic
職人の技
時間をかけて素材を育む
家具製造は原木の厳選より始まり、木の性質や木目の違いを大切にします。 下準備は特に入念で、木を寝かせる期間は、桐なら3〜5年、ケヤキならば10年以上風雨にさらします。これは製品になった際に反りなどが生じないようにするためです。桐は時間をおくことで、灰汁が抜けます。抜けると一度は真っ黒になりますが、それを手間ひまかけて洗って表面を削るとよく知られるきり独特の美しい木肌が表に出てきます。
この桐は府中家具の特にタンスの内部に使用されます。そうすることで、良質な見た目に加えて、湿気や虫などから衣類を守る機能が高まります。 材料として出来上がった桐は非常に柔らかいので滑らかに仕上げるのは実はとても難しいのです。良く手入れされた道具を駆使して熟練した職人が加工を行います。
愚直なまでの手間ひま
上記の蟻組み(ありぐみ)は府中ではさらに角部に「トメ」を付けることで更に強度を高めています。釘を使う際も、引き出しの底部分と同程度にすり減るための木やプラスチックの釘も使用するなどの工夫が満載です。そして、引き出しが隙間無く収まるように職人が何度もカンナをかけます。高品質なタンスの引き出しを閉めると、他の段の引き出しが出っ張る現象は、この作業によるところが大きいのです。
それから、最も特徴的な技術として「底板アーチ加工」というものもあります。これは引き出しの底板部を多少反らせることで側面の板に重みを分散することができるようにするための加工です。重いものが入ったときでも、軽く引き出せるようになります。 このような技術をタンスで培った府中家具ですが、素材に対するこだわりと技術の追求はタンス以外の家具にも応用されています。
府中家具の館の考える府中家具の今
当店「府中家具の館」は家具産地の広島県府中市にて家具製造メーカーとして50年以上前に産声を上げました。 その後、小売店として業態を広げつつもメーカーとしても府中家具を製造し続けてきました。高品質な木材を長期間にわたって育み、タンス、食器棚、テーブル、一枚板などを製造しています。小売店としてお客様のご要望を毎日うかがいながら、その声を商品に反映させています。また、サイズや素材など、お客様のご要望にきめ細かく対応します。
ひとつひとつ作ってお届け
府中家具の館の工房では、少し特別で大切にしていただける家具をひとつずつお作りしています。世の中には大量に、均質で、安価に、どこでも販売されている家具があります。一方、当工房は、丁寧に作り込んだ、味わいのある、木そのものの良さが伝わるような家具作りを目指しています。木はひとつとして同じ物はありません。人間の個性や好みもひとりとして同じことはありません。そのため、ひとつひとつ異なる物の中から丁寧に相性の合う家具を選んでいただき、選んだ家具と長くおつきあいしていただきたいと思います。